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名門中学の子どもたちが何を学んでいるのか、を読んで感動

おおたとしまさ『中学受験 名門中学の子どもたちは学校で何を学んでいるのか』を読了。おもしろかった。麻布、海城、巣鴨、筑波大学附属駒場桐朋、浅野、聖光学院豊島岡女子学園甲陽学院東大寺学園西大和学園ラ・サールと、そうそうたるラインナップだな…。ふつう、学校っていうのは自分が行っていたところ、自分の子どもが行くところ、くらいしかわからない。だから、こうしていろいろな学校の授業をレポートしてもらえるのっていいな、と思います。
中でもよかったな、と思ったのは、筑波大学附属駒場での数学の授業の一コマ。

鈴木先生が「よーい、スタート!」と号令をかけると、クラスが徐々に静かになる。5分もすると「できた!」という声が上がる。その生徒は教室の前に出て、黒板を使い、自分の証明を発表する。
友達の証明の方向性が見えてくると、それまでざわついていた教室はシーンと静まりかえる。全員がその証明の美しさに釘づけになっているのがわかる。ところどころで、「おー!」「すげーや、これ」などの感嘆の声が聞こえてくる。そして発表が終わると拍手喝采に包まれる。理解し切れていない生徒のために、教師が補足の説明を書き加える。そこでまた教室はシーンと静まりかえる。「これはかっこいい証明だね!」と教師が褒めると他の生徒たちも「カッコイイ!」と応じる。教室全体が、引いては打ち寄せる波のように脈打つのがわかる。
「どうしても発表したい!」という2人目の生徒の証明はかなりユニークだ。今度は教室全体がざわざわし始め、「なにこれ」「すごすぎる!」「なんかキモいんだけど」「なんでこんなこと思いつくの?」というつぶやきが聞こえてくる。数学の証明問題を審美的感覚で捉え、楽しんでいるのがわかる。(p.137-138)

こういう雰囲気があるのってとても大切なこと。勉強してるやつがかっこいい、という空気があるのもいいし、それを褒めてリスペクトする空気もいい。さらに、「なにこれ!」とユニークな証明をした生徒のことも認めている。すばらしい学習環境だなあ。
さらに、数学の試験の採点方針についての明確なコンセプトもすばらしい。

テストの採点では「部分点をばっちりあげる」と鈴木先生。「証明問題の採点はまるで暗号の解読。正直大変です。でも細かいところまでしっかり見て部分点をたくさんあげます。他人にわからせるマナーを身につけてほしいからです。学年が進むごとに、生徒たちの成長が答案に表れるようになります。自己中心的な答案から、他者の目を意識した答案に変化するのです」(p.139-140)

学校の先生方にも、「あの学校はこんなことやってるのかあ」とか「あ、このアイデアいいな」とか、刺激をもらって、授業をブラッシュアップすることができるのではないかな、と思います。
他にもいろいろと勉強になりました。【→メモ:名門中学の子どもたちは学校で何を学んでいるのか

中学受験 名門中学の子どもたちは学校で何を学んでいるのか

中学受験 名門中学の子どもたちは学校で何を学んでいるのか