日々、想う。んで、記す。

プライドを持たない、節操を持たない、愛着を持たない、弱音を吐かない。

メディア創造ワークショップ「社会のモンダイを遊びに変えるゲームデザインの考え方」に参加

 東大の駒場キャンパスに初めておじゃまして、メディア創造ワークショップ「社会のモンダイを遊びに変えるゲームデザインの考え方」に参加してきました。講師は山本貴光さん。いやー、めちゃめちゃおもしろかったなあ。
 山本さんは、SFCの先輩で、コーエーで「三國志」などのゲーム開発に携わり、今は専門学校で教えられていたり、文筆業をされているそうです。我が家で絶賛積読中の『ルールズ・オブ・プレイ』の翻訳をされた方です。下巻を買っていないのはもちろん、上巻も読み終わっていないです…

ルールズ・オブ・プレイ(上) ゲームデザインの基礎

ルールズ・オブ・プレイ(上) ゲームデザインの基礎

ルールズ・オブ・プレイ(下)

ルールズ・オブ・プレイ(下)

 独特の、ひょうひょうとした語り口がぐぐっと人を惹きつけます。すごいわあ。さまざまなゲームの実例も紹介してくれました。事前に、「ゲームをやっておくとより理解が深まります」というのが提示されていたので、Crash townCookie Clickerなどをやってから行きました。Cookie Clickerは、山本さん曰く「仕事の合間にCookie Clickerをやっていたはずが、いつしかCookie Clickerをやっているようになる」というほどの中毒性…単純なゲームなのに…。翌日オフィスで、タブブラウザで開いてやってみました。たしかに、圧倒的な中毒性。簡単なのにね。すごいよ…。オフィスでやっていて、途中で打ち合わせが入って1時間半くらい席を離れ、帰ってきてタブを開いたときにクッキーがすごい数になっていたときのあの幸せさ…。おそろしいゲームだ…。でも、「なぜこんなに熱中してしまうのか」という仕組みの話をされて、しかも、これがマルクスの「資本論」につながるのではないか、というところにまで話がいたり、もう超興奮でした。教材にできるかなあ。
 あと、「信長の野望」の民忠誠度(略して「民忠(たみちゅう)の話とか、いろんななゲームを題材に、ゲームデザインの要点を講演してもらいました。

 東大の中原先生が、翌日のブログにまとめられているのがわかりやすいです:
NAKAHARA-LAB.NET 東京大学 中原淳研究室 - 大人の学びを科学する: 「ゲームデザイン」と「人材育成」の似ているところ!? : 「開始直後から街を出れば情け容赦なく強敵モンスターが襲ってくるRPG」はつくらない!?

 ゲームって何だ?どんなデザインだ?という話のメモは以下の通りです。あくまで自分用のメモですけど、興味ある人もいるかもしれないので、貼ります。
1.ゲーム
プレイヤーはゲームから命令される
 竜王を倒せ、ピーチ姫を助けろ、ポケモンマスターになれ、など

モンダイを解決せよ!

ゲームとは「モンダイ」への挑戦
 作り手にまわると、このモンダイをたてることが難しい

ゲームが提示するモンダイはただのモンダイではない。
何か条件があるだろう。
→ゲームが提示するモンダイには、どんな共通点があるでしょう?
 →ゲームが提示するモンダイ解決できることが保証されている。(クリアできることが保証されている)

ゲームの制作者は、モンダイと共に解決手段を与える。
そして、モンダイを解決できることが保証されている。
解決手段は何でもいいわけではない。(必勝、楽勝でもつまらない=失敗する可能性が必要)

ゲーム制作のヒント(まとめ)
・ゲームを作るなら、モンダイをつくればいい。
・ただし、簡単に解決できないモンダイを。
・プレイヤーを適度に困らせる解決手段もね。
・試行錯誤して失敗するのも楽しみのうち。

カート・ヴォネガットの物語チャート
『国のない男』も参考に。

国のない男

国のない男

■ようこそ、クッキー地獄へ
クッキークリッカー
「per second」の数値が上がっていく。
・シンプルすぎるほどシンプルな仕組み
 プレイすればするほどクッキーが増えていく
 ゲーム状態変化でアイテム種類増加
 クッキー生産率増で加速… すべては、Cookie per secondのために。
・モンダイの観点から分析
 1.当初のモンダイは、できるだけ多くのクッキーを焼け
 2.やがて真のモンダイが見えてくる。Cpsを最大化せよ!
 3.そのつどのモンダイ(ジレンマ)
   手持ちのクッキーで、どのアイテムを買うべきか。

なぜハマるのか?
1.モンダイが明確
2.解決手段が手軽
3.行動への反応が明確で達成感あり
4.常にゲームの状態が変化し続ける
5.常に「もっと速度は上がるはず」と思う
6.常にアイテム購入は苦しい
7.気づけばグランマのことを考えている

クッキークリッカーの正体
・Cpsの工場に喜びを感じる
・全資源おCps増のために傾ける
・投資がさらなるクッキーで返ってくる
・これはまるきりG-W-G' の世界ではないか!
 貨幣(Gelt)ー商品(Ware)ー貨幣(Gelt)
剰余価値の生産という資本主義経済の神髄
マルクスの資本論そのものの、意外とシリアスゲームだった…

モンダイの二重性
・二種類のモンダイを区別しよう
・物語としてのモンダイ
  「クッキーを焼く」という設定・演出
・遊びとしてのモンダイ
  ある変数xの最大化を目指す

2.社会のモンダイ
・ゲーム制作では、モンダイの発見と創造に四苦八苦する
・一方、社会はモンダイの宝庫、後は選ぶだけではないか!

とはいえ経験だけが材料
・直接、間接を問わず経験だけが制作の材料
・経験と記憶にないことは材料にできない
・そのつもりで眺めること、調べること
・世界の歴史、現代社会はモンダイの山
・新聞を一部持ってきたら、材料がいっぱい

3.社会のモンダイをゲームにする
モンダイを選んで模型を作る
1.テーマを選ぶ
2.モンダイを設定する
3.プレイヤーの立場を決める
4.モンダイを要素に分解する
5.要素同士を関係づける

信長の野望」で模型の構造を検討する
 テーマ 日本の戦国時代
 モンダイ 戦乱の世を終わらせ、全国を統一する
 プレイヤー 一国の君主
 解決手段 他国を外交交渉、戦争で制圧
・軍事と政治と、どちらにリソースを投入するのか。
・民忠などは、「信長の野望」オリジナルで作った要素。

模型づくりの参考
・統計の発想は参考になる
 要素同士の相関を創造し、数値的に解析する
 例 労働時間と健康状態に関係はある?
   家庭の蔵書数と読書率に関係はある?

B.Clash Town
・どちらかというとシリアスゲーム
#そうなのか…これがシリアスゲームというのは違和感があるなあ。
・放置するとモンダイが発生する
・何かせずにいられない、とプレイヤーに思わせることが大事(これが作り手にとっては難しい)
・試行錯誤がそこから始まる
・ただし、ちょっと物足りない
 →それはなぜか、と考えましょう
  →前にやったことが累積していかない
  →一度「正解」がわかるとそれまでだから。正解がわかると、試行錯誤の楽しさが消える

C.フットボールデファンズ
・放置すると大変
・前のステージの結果を持ち込むことができる

ケーススタディからのヒント
・モンダイが明確であること
・プレイヤーが何かをしたくなること
・試行錯誤が楽しめること
・必勝法が存在しないこと
・遊ぶたび違う状況が生じうること
・最後まで先が読めないこと
・解決に近づいているか否かは分かること
・それまでの結果が累積すること
・未解決のモンダイが、プレイヤーを招く(=未解決感がいつも残っている)
 →もっとCpsをあげられないだろうか?
 →「まだやり尽くしていない」という飢餓感を煽る

■質疑応答
・まじめさと楽しさのバランス
 →お勉強だと気づかれるとやってくれなくなる
  →多少、だまさないといけない
  →ルクレティウス(『物の本性』)
   「君が楽しんで読めるように、詩の形にしました」
 →ポイントは入り口。
  最初に引き込んでしまったら、あとはまじめでも大丈夫。

・そもそも答えがでていないモンダイについてはできますか?
 →原発問題とかは?
  →原発の運営をする、というふうにモンダイをすり替える
   100年間、運営してみなさい、として、ジャマをたくさん用意する。