日々、想う。んで、記す。

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『クロネコヤマト「感動する企業」の秘密』、よかった!

 石島洋一『クロネコヤマト「感動する企業」の秘密』を読了。クロネコヤマトの宅急便で有名だけど、企業的にもすごいよね…。東日本大震災のときに、いろいろな場面で「日本の企業、すげーな!」と思わされることはたくさんあったのだけど、クロネコヤマトもやっぱりすごいわ…。なんか、感動した。

東北への恩返し

 被災地への物流網として、ボランティアで車を出すというのを、現場レベルでスタート。それを主管支店長が認める。ヤマトしかこれはやっていないらしい。

三人の主管支店長は話し合って、覚悟を決めた。
「会社の車を使い、経費を使って、積極的にみんながボランティア活動をしている。人件費も含めたら膨大な金額になる。でも『世のため、人のため』と会社がいつもいっている方針なら、このままやらせてみよう。本社からお叱りを受けたら、自分たち主管支店長のクビを差し出せばいいか(p.26-27)

 現場レベルだけでなく、宅急便1個につき10円の寄付をすることも決める。

年度計画について話していた木川HD社長が、最後に話を始めた。
「今回の震災で、現地の人達が自主的に救援物資輸送に動いてくれたことを誇りに思う。今度は本社として何ができるかを考えてみた。東北はクール宅急便などでヤマトを育ててくれた地域でもある。その地域に対する恩返しとして、水産業、農業、そして学校や病院等の生活基盤の復興に寄付先を指定して、宅急便一個につき一〇円の寄付をしていきたい」
社長就任日、この挨拶は幹部を一瞬驚かせた。宅急便一個につき一〇円となれば、当時の年間取り扱い量は一三億個だから、累計一三〇億円にもなる。ヤマトの通常の最終純利益は三〇〇億円程度なので、その四割にもなる、大変な額である。幹部達もその金額がいかに大きなものであるかは、すぐに気付いたのだろう。そして、その後に起きたこと──。静まりかえった雰囲気を、拍手の嵐がかき消していったという。(p.36-37)

 それを社長が決め、株主にも伝えて、認めてもらう。

株主のほうは大丈夫だったのだろうか。ある株主の代理人から、木川HD社長に質問が飛んできた。
「社長は今回の寄付で、株主に損害を与えたということで訴訟を起こされることを考慮していないのですか?」
木川氏は答えた。
「まったく考えていません。寄付は、会社が今為すべき行動と考えます。株主代表訴訟を起こす人がいるのであれば、受けて立ちます」
度胸の据わった経営者である。
銀行出身の木川氏にしてみれば、株主代表訴訟のことなど知らないわけはない。しかし、「今、東北に恩返ししなくてどうする」という思いを実行に移していった。そんな木川HD社長がよく口にする言葉がある。
「為さざるの罪」(p.40-41)

 さらに、その分を損金として計上できるように、財務省と折衝する、とか。すごすぎる。「できない」っていうのは簡単、でも、そこからどうするのか、を考えていく姿勢がすごいなあ。

ヤマトはなんと財務省と折衝に入った。この寄付について、社会的意義を理解してもらい、無税化の交渉をしたのである。かつては運輸省(現国交省)と大論争を交わしたことで有名なヤマトだが、今度は財務省が相手だ。勝手が違う(中略)財務省も粋な計らいをしてくれた。全額損金を認める告示がなされたのは、六月二四日、つまり株主総会の数日前だったのである。ヤマトの株主に対する説得材料を、財務省が与えてくれたことになる。日本のお役所も捨てたものではない。(p.42-43)

人を育てる

 ヤマトの配達をする人は、セールスドライバーさんなのだけど、その人たちが会社全体のことを考えていて、「ただ届けている」だけじゃないってことも、いろんな例で出されます。

納得した上でなければ人は自主的に動かない。大井氏は集配改革の仕組みではなく、必要性を訴え続けたのだ。そういえば、大井氏がよく口にする言葉がある。
「“やらされ感”から“やりたい感”、“やりたい感”から“任せろ”感」
部下が納得した上で自ら行動していく、そうした“任せろ感”を常々持てる組織を作りたいものである。(p.103)

 大学生の頃、ヤマトの事業所でバイトをしていたことがあります。朝6時~8時のシフトで、荷物の仕分けをやっていたのだけど、社員さんの朝礼を思い出すなあ。社訓を唱和するの。

  • ヤマトは我なり
  • 運送行為は委託者の意思の延長と知るべし
  • 思想を堅実に礼節を重んずべし

 あと、「玄関先放置は絶対にいたしません」みたいな誓いの言葉もあった気がする、と思って調べてみたけど、今は違うやつになっていた。僕がバイトしていたのは20年近く前だから、変わったのかな。
 ほぼ日でもヤマトの特集記事があった。これ、後で読もう。
ほぼ日刊イトイ新聞 - クロネコヤマトの DNA

 いやー、いい本だった。クロネコヤマトが好きになります。(まあ、実際は全部が全部そうじゃないとは思うけれど。それでも、好きになれる企業というのは大切なことよね。