日々、想う。んで、記す。

プライドを持たない、節操を持たない、愛着を持たない、弱音を吐かない。

高野秀行『謎の独立国家ソマリランド』、世界は広いな。

 高野秀行『謎の独立国家ソマリランドを読了。めちゃくちゃおもしろかった。描き方がおもしろいよ。そして、愛を感じる。海賊あり、内戦ありのソマリアの中で、平和を維持してるソマリランド

謎の独立国家ソマリランド

謎の独立国家ソマリランド

 描き方がおもしろおかしく、でも、ちゃんといろんな問題とかも描いていて。郷に入っては郷に従え、を地で行く取材方法とかも、羨ましくも思うし、「こんなことできねぇ…」って思うし。コミュ力、高すぎ(笑)

モガディショは私が今までに全く見たことのない種類の町だ。
あまりに意外だったのでついこの町の繁栄っぷりを強調してしまったが、一方で、「無法都市」の異名も決して伊達ではなかった。
なにしろ、肩から自動小銃を下げた人がそこら中にいる。あまりに普通に見かけるので、だんだん「現地で流行っているユニークな肩掛け鞄」みたいに見えてきたくらいだ。
(略)
繁栄と危険の妙な調和といえば、忘れられない光景があった。地元の人たちは白いミニバンみたいな車を乗り合いバスとして利用している。もちろん、他の車と同様、これもみな日本車だ。そういうミニバスはときどき、開けっ放しのドアに銃を持った民兵が立ち乗りしている。
「席にすわんなきゃいいんだろ」とカネを払わず、強引に入口に立つらしい。見た目はバスジャックされた車両である。
一度など、車の両側に高々と自動小銃を掲げた民兵が二人、立ち乗りしているバスが向こうから走ってきたのだが、バスの正面には大きくひらがなで「ようちえん」と書かれていて、そのシュールさに目眩がしそうだった。そんな幼稚園、あるか!(p.329-331)

 ソマリランドの話、プントランドの話、南部ソマリアのめちゃめちゃな状況を、源氏とか平氏とか、日本の大名たちの名前を当てはめて説明してくれる。実は、これ、けっこう助かります。
 で、たっぷりとソマリランドの話、プントランドの話、南部ソマリアの話を読んだ後で、その後どうなったかも書いてくれている。

さて、その後、ソマリランド、プントランド、南部ソマリアがどうなっていったか、簡単に記したい。
ソマリランドは、東部のドゥルバハンテ里見氏とのごたごたを除けば、相変わらず治安がよく保たれている。車は増え、建設ラッシュだ。コカコーラもハルゲイサ近郊に工場を作った。
2012年11月、私の滞在中に「公認政党を決める選挙」が行われた。ソマリランド憲法では「政党は三つまで」と定められている。そして十年に一度、その三つの政党を決める選挙が行われる。ベスト3から漏れた政党は消滅し、政治家は三つの政党のどれかに入党することになる。なぜそんなことをするのか。それはまず氏族同士で固まるのを防ぐため。もう一つは政党が対立すると単純に混乱するから。
ちょうどこのとき日本でも衆議院の選挙活動が始まっていたが、ネットで「新党乱立で国民が混乱」というニュースが出ていて、思わず笑ってしまった。
ソマリランドのほうがやはりシステム的には日本より上だ。そして何より私がソマリランドの政治を評価するのは、彼らはいつも自分たちで考えて自分たちに合うシステムを作っていることだ。もちろん間違いもたくさんあるし、試行錯誤の連続だが、国連や先進国のお仕着せではなく、安直な真似でもない。日本も今さら欧米にモデルを探すことはやめて、ソマリランドを参考にすべきではないかと真剣に思う。
西欧民主主義を超えたものがたしかにそこにあるからだ。(p.494-495)

 世界は広いな。ほんと。日本なんてちっぽけで、「普通」なんてものはないな。広い世界で物を見たい、物を知りたい。


 全部を読み終わってから改めて読んだ、著者の高野さんの紹介文がそもそもおもしろいことに気づいた。

高野秀行
ノンフィクション作家。1966年東京都生まれ。早稲田大学探検部当時執筆した『幻獣ムベンベを終え』でデビュー。タイ国立チェンマイ大学日本語講師を経て、ノンフィクション作家となる。誰も行かないところへ行き、誰もやらないことをやり、誰も知らないものを探す。それをおもしろおかしく書くをモットーに、多くの作品を生み出している。

 他の本も読みたくなっちゃうよねえ。

幻獣ムベンベを追え (集英社文庫)

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アヘン王国潜入記 (集英社文庫)

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イスラム飲酒紀行

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西南シルクロードは密林に消える (講談社文庫)

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