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日々、想う。んで、記す。

プライドを持たない、節操を持たない、愛着を持たない、弱音を吐かない。

「ユリイカ」の森博嗣特集読み終わり。あらためてすごいなあ、と。

book

ユリイカ」の11月号、森博嗣特集。ようやく読み終わる。ユリイカ、超ひさしぶりに手に取りました。大学生の頃はちょくちょく読んでいたのだけどな。働き始めたら、あのボリュームとあの内容は、読めない…(笑)でも、大好きな森博嗣特集ならば、買うわけです。まあ、買ってから2ヶ月とか余裕で経ってますけど…。
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 杉江松恋さんと清涼院流水さんの対談がおもしろかった。それぞれに、森先生の印象を語っている部分。気になったところだけ、抜粋。

僕がおうかがいした最初の日にガンダムのいちばん部品数の多いプラモデルを作りはじめていたんですが、翌日再訪したときに『ミステリィ工作室』に載せる結構文字数の多い文章を書き上げられていて、「それよりもガンダムのほうがたいへんでした」と言われました。そのときに、このひとは工作という観点からすべての作業を同質に見ているんだなと思って、それが非常におもしろかったんです。小説は別に聖域でもなんでもなくて、作業と思考がすべて同一レベルで考えられている。そういうひとは作家では初めて見ました。その第一印象をいまでも引っ張っています。」(杉江松恋)(p.104)

 「すべての作業を同質に見ている」っていうの、わかるなあ。憧れる。仕事とプライベートと、地続きで考えたいなあ、と思うのに似ているかも。

森さんの言葉で印象に残っているのは、「相手の感情をなにも動かせないのであれば、文章を書いてお金をもらう資格がない」とおっしゃっていて、これは耳が痛い。作家の誰もが思ったことを書くわけじゃなくて、特に僕なんかはデビュー当時から叩かれまくっていましたから、発言するときはこんなことを言ったらまた叩かれるんじゃないかというのがちょっと脳裏をよぎるんですね。森さんはそうじゃない。原稿料をいただくのだから、読者が激怒したり感動したり感情を揺さぶるものじゃないとお金をもらう文章ではない、というのはよく思い出す言葉のひとつです。」(清涼院流水)(p.110)

 これもいい言葉だなあ。プロだなあ。そもそも、「このまま大学で勤めていてもやりたいことが全部できない。やりたいこと全部実現するために、いちばん手っ取り早くてできそうなのが、小説を書くことだった」というのを言っていたはず。

僕が森さんの作品で後世に残したいと思うのはやっぱり『MORI LOG ACADEMY』なんですね。あれには本当に森さんの思考のすべてが詰まっていて、あれを読むだけで作家やクリエイターは勉強になりますし、本当に読んだほうがいい(笑)。僕がいちばん影響を受けたのは間違いなく『MORI LOG』です。(清涼院流水)(p.113-114)

 『MORI LOG ACADEY』は、たしかに読みごたえあります。全部で13冊。本棚にずらりと並んでいるんだけど、読み返せるかなあ…。日記だけど、きっといま読みなおしても、あまり古く感じないだろうな、と想像。それは、森先生がそうした目的をもって書いているから。ほんと、プロだなあ…。
 羽海野チカ先生の表紙も大好きだった。

MORI LOG ACADEMY〈1〉 (ダ・ヴィンチ ブックス)

MORI LOG ACADEMY〈1〉 (ダ・ヴィンチ ブックス)

工学部というコミュニティがどのようなものかを知るには、今野浩『工学部ヒラノ教授』(新潮文庫)が参考になる。今野は東大工学部出身だが、彼が記した「工学部の教え7ヶ条」は広く日本の工学部の現場で通用しているものだという。
具体的には、「第1条 決められた時間に遅れないこと(納期を守ること)」、「第2条 一流の専門家になって、仲間たちの信頼を勝ち取るべく努力すること」、「第3条 専門以外のことには、軽々に口出しをしないこと」、「第4条 仲間から頼まれたことは、(特別な理由がない限り)断らないこと」、「第5条 他人の話は最後まで聞くこと」、「第6条 学生や仲間をけなさないこと」、「第7条 拙速を旨とすべきこと」。
一見してわかるように工学者集団における行動規範を示したもので、これは、エンジニアの活動が本質的に集団作業であることの反映である。今野は他学部の教員の観察結果から、この7ヶ条が工学部特有のものと捉えている。
森博嗣は、作家や編集者からなる出版業界が文系出身者の巣窟であり、たとえば、彼らが時間にルーズであることなどを嘆いているが、それは彼もまた工学部的身体を纏っていることの現れといえる。
7ヶ条は工学者集団における行動規範だが、それは裏返すと、個々の工学者の人格や内面については関知しないということだ。となると、エンジニアの中に時折「子供っぽい(チャイルディッシュ)」振る舞いをする人たちが見出だせることにも合点がいく。行動規範がある分、内面は「自由」なままで構わない。だからこそ、専門外のことには口を出すな、という教えもあるのだろう。森の作家としての特性、特に、近年執筆数が増えているエッセイの特徴を理解するためのよい補助線となる。(p.123)

 「工学部の教え7ヶ条」、これも非常におもしろい。たしか、真賀田研究所での唯一のルールが、「できあがるまで黙ってろ」だったと記憶しているのだけど、あのルールも好きだったなあ。仕事のときに、そう思うこと多々あり(笑)

工学部ヒラノ教授 (新潮文庫)

工学部ヒラノ教授 (新潮文庫)


 社会人1年めに出会ってから、本当にむさぼり読んだなあ、森博嗣。ああ、作品再読したくなる…