『クォンタム・ファミリーズ』を(今さら)読んだ
東浩紀『クォンタム・ファミリーズ』を読了。おもしろかった!パラレルワールドを行ったり来たり。どこがどうつながっているの?この世界とあの世界は何がどう違うの?っていうのが、村上春樹の『世界の終わりとハードボイルドワンダーランド』につながっていく。
村上春樹が言う35歳問題が非常に興味深い。35歳問題とは何か、村上春樹の『プールサイド』の中で描かれているのを引用。
僕は考えた。ひとの生は、なしとげたこと、これからなしとげられるであろうことだけではなく、決してなしとげられなかったが、しかしなしとげられる《かもしれなかった》ことにも満たされている。生きるとは、なしとげられるはずのことの一部をなしとげたことに変え、残りをすべてなしとげられる《かもしれなかった》ことに押し込める、そんな作業の連続だ。ある職業を選べば、別の職業を選べないし、あるひとと結婚すれば別のひととは結婚できない。直接法過去と直接法未来の総和は確実に減少し、仮定法過去の総和がそのぶん増えていく。
そして、その両者のバランスは、おそらく三十五歳あたりで逆転するのだ。その閾値を超えると、ひとは過去の記憶や未来の夢よりも、むしろ仮定法の亡霊に悩まされるようになる。それはそもそもがこの世界に存在しない、蜃気楼のようなものだから、いくら現実に成功を収めて安定した未来を手にしたとしても、決して憂鬱から解放されることがない。(村上春樹「プールサイド」より引用)
このパラレルワールドが、「選ばなかった世界」として存在しているのだとすれば、それがちょっとずつ違うことにも意味があるよなあ、と楽しくなってくる(笑)僕はもうすぐ38歳。35歳問題はとっくに通過していて、仮定法過去の総和の方が大きいぞ、と。
そこにさらにITによって世界がどう変わってきたのかを加えている。検索性同一性障害なんて、本当にありそうよね…。検索に頼るようになってくると、「誰によって書かれたのか」がわからない情報に埋もれるようになって、自分のことでさえ、誰かに語らえるようになる。誰かから見た自分が、SNSなどを通じて見えるようになったぶん、本当の自分って何?って感じになってしまう、というのはありそう。それをもっと突き詰めていけば、シリアスな状況になる人もいるよなあ。
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などなど、いろんなことを考えさせられつつ、読まされてしまった(悪い意味でなく、いい意味で) 思想家としての東浩紀さんも本当に注目しているけど、また小説書いてほしいな、と思ったな。
そして、『世界の終わりとハードボイルドワンダーランド』は、大学生の頃に読んでそれっきりになっているので、再読してみたいな、と思った。
世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド〈上〉 (新潮文庫)
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世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド〈下〉 (新潮文庫)
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