日々、想う。んで、記す。

プライドを持たない、節操を持たない、愛着を持たない、弱音を吐かない。

善意だけでは社会はきっと変わらない

山口絵里子『裸でも生きる 2』を読了。力が出るわ。とても冷静な考え方の持ち主だな、と思います。「いいことだから」で人はお金を払い続けるのは難しいし、それだと他者にキャスティングボートを委ねることになってしまう。いずれ、自分で自分の道を切り開けるようになるためには、善意の上でではなく、人の欲望・資本主義のシステムの上で、きちんと選ばれるものを作る方が健全だもの。

ストーリーを作るのは、新しいバッグの形を作るよりも、数百倍もの時間がかかる作業だが、長期的には必ずブランドを支える要素になると信じている。
意味があるプロセスを経て作られているものはたくさんあるが、日本では「フェアトレード」という考えもその一つかもしれない。
途上国で生産し、それを販売しているという意味では同じだが、フェアトレード商品を買うことは、どこかボランテイアをしているときの感覚に近い。かわいそうな人がいるから、何か役に立てばと思い購入する。
しかし、「それって続くのかな」と私は思ってしまう。
私はむしろ、競争力のある商品を作りたいと思うし、実際に小田急百貨店の店舗では、多くの「通りすがり」のお客様がマザーハウスのストーリーを知ることなしに購入してくださっている。あとから、「バッグを買って、初めてバングラデシュという国を知りました」と言ってくださる方がいる。本当にうれしい。
重要なのは、途上国のために購入するというアプローチではなく、「かわいいものがほしい」「かっこいいものがいい」という人間の普通の“欲求”と真正面から向かい合い、満足度を満たすプロダクトを作りながら、実は確実に途上国の雇用を増やし、社会の利益とつながっている仕事をすることだと思う。
欲望自体を悪者と見る従来の資本主義を敵視した考えに私は賛同できない。
理由は簡単で、自分自身が欲望を持った人間だからだ。私はマザー・テレサでもなければ、「いい人」でもない。そんな開き直りの先に、資本主義をもう一度ポジティブに塗り替えるという視点に立脚し、マザーハウスにたどり着いた。
何百年かかるんだよ、と笑われてしまいそうだが、これまで本に書いてきた小さな人間の小さな会社の物語には、実はこんな哲学的背景があることを知ってもらえたら光栄である。(p.121-122)

マザーハウス、どんどん好きになっていく。これからどんなふうに変わっていくのか、楽しみです。

裸でも生きる2 Keep Walking私は歩き続ける (講談社BIZ)

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