佐伯啓思、バランス感覚が信頼できる
こないだの京都出張の帰り道に、新幹線で読見始めた佐伯啓思『反・幸福論』を読了。佐伯啓思さん、何か悟っちゃったかな?と読み始めて前半は思ったのですが、後半はなかなか真摯だな、と思いました。脱原発をするかどうか、ということについて「これはテクニカルな政策的課題ではない」と言い、これは「価値の問題」と伝える。
脱原発は、原発はもうこりごりだ、というただの街角のつぶやきではなく、脱成長路線へと価値転換をはかる、という覚悟の問題です。(p.201-202)
国民のほとんどが、「敗戦後体制」(=「平和憲法」「アメリカニズム」*1「経済成長」)に満足していて、そこに問題があると思っていないので、これをいじるとなると、大衆の支持を失うことは間違いない。しかし、この3点セットがもはや機能不全に陥っているのが問題である、と言う。ここを認めていって(=まあ具体的には経済成長を手放して)、不便な生活を我慢できるのか。それによって経済は悪くなるだろうし、社会も不安定になるかもしれない、っていう「暗澹たる未来図」を描けるのか、ってことですよね…。僕個人としては、「そんなきちんと扱えない技術=原発」はリスキー過ぎて、そのために多少生活がマイナスになってもいいな。廃炉のための技術を日本らしく培っていってほしいと思うよ。日本人は、きっと脱原発後の不便さにもびっくりするほど適応できるんじゃないかと思う。そこに期待したいな、と思うけどなあ。
なぜなら本当の問題は、自民か民主か、あるいは政治主導か官僚主導か、という点にあるのではなうわれわれ自身の内部にあるからです。われわれの内なる「ひねくれた権力欲」にあるからです。
にもかかわらず我が身に振りかかる不利益や不満を、どうもわれわれはあまりに性急に政治のせいにしてしまう。(p.237)
自分たちでしっかり考えて、決める、っていうことが大事。当たり前のことを、しっかり書くのが「保守」*2かなあ、と佐伯啓思さんを、「やっぱすげー!」と思った本でした。【→メモ:反・幸福論】
- 作者: 佐伯啓思
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2012/01/17
- メディア: 単行本
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