日々、想う。んで、記す。

プライドを持たない、節操を持たない、愛着を持たない、弱音を吐かない。

『かかわり方のまなび方』、勉強になった!

 西村佳哲『かかわり方のまなび方 ワークショップとファシリテーションの現場から』を読了。おもしろかった。さまざまな現場の人たちとのインタビューあり、西村さんの解説あり。勉強になりました。

 いくつか、気になったところをメモ。

トップダウン型の指導や管理を担ってきた旧来のリーダーやディレクターに代わる、これからの支援者的なプロジェクト・マネージャー像をファシリテーターという職能は提示してくれていると思った。
求められる資質をまとめた、次のような10箇条にも出会った。

  1. 主体的にその場に存在している。
  2. 柔軟性と決断する勇気がある。
  3. 他者の枠組みで把握する努力ができる。
  4. 表現力の豊かさ、参加者の反応への明確さがある。
  5. 評価的な言動はつつしむべきとわきまえている。
  6. プロセスへの介入を理解し、必要に応じて実行できる。
  7. 相互理解のための自己開示を率先できる、開放性がある。
  8. 親密性、楽天性がある。
  9. 自己の間違いや知らないことを認めることに素直である。
  10. 参加者を信頼し、尊重する。

「他者」や「参加者」と書かれている部分を、学生や、プロジェクト・メンバー、子どもや患者、あるいはお客さんに置き換えることも可能で、人と人のリアルなかかわり合いの中で働きを成す、あらゆる支援的な仕事にそのまま当てはまる話だと思った。(p.32-34)

 まったくそのとおりだと思います。こうした資質が自分にあるかどうかは別として、ある程度後天的に身につけることもできるだろうと思っているので、頭に入れておこう。


 もうひとつ、PAPAはProject Adventureと呼び名で知られる野外プログラム)の創始者の言葉についてのところ。これもとてもいいな。

PAの創始者の言葉に「フルバリュー・コントラクト」というのがあるんです。お互いの価値観や存在を最大限に尊重すること。このことを知って生きているのと、ただ生きているのは違うことなんですよ。
社会にはいろんな人間がいます。そのすべてを肯定するのは難しいと思う。でも、人が自らいのちを絶つことなく生きてくれているということ、そのものを尊重できなければいけないと僕は思います。(p.42)

 フルバリュー・コントラクト。多様性を教えるために、必要な土台だと思います。


 大村はまさんの授業アイデアが紹介されていました。メインの筋ではなかったのだけど、すごくおもしろかった。

大村はまという国語教師がいた。彼女は、戦後の子どもたちが新しい社会をつくってゆくためには「ことば」の教育が重要だと考え、その後の国語教育を照らすような単元学習の実践を重ねた。
たとえば一人ひとりの生徒が、ある一つの言葉について一冊の国語の教科書の中でそれが使われている部分をセンテンスごと抜き出して、カードに書き出す。その分類を通じて、めいめいが自分なりの辞書の一項目を書き上げるという授業をしたり。
「自分の履歴書」というテーマで文章を書いた後、その生徒一人ひとりに、「あなたにはこの人を」と異なる人物伝が一冊ずつ手渡され、生徒はそれを読み進める中で気づいたことや学びを学習記録として手元に残して、最後に報告し合う授業だとか。
個々のアイデアは秀逸で組み立て方も素晴らしい。その授業を受けた数千名の卒業生から、忘れられない先生として今も敬愛されていると聞く。
が、彼女のドキュメンタリー映像を見て何よりも驚いたのは、「同じ内容の授業はしません」という一言だった。既に一度やっているものだと、自分のあり方が変わってしまう。教師が初々しさを失うことが生徒たちに与える影響を語っていて、僕は居ずまいを正される思いがした。(p.66-67)

 このアイデアはやってみたいなあ、と思いました。じっくり、大村はまさんの著書は読みたいな。


 コミュニケーションの大切さについても。この比喩が最高だと思います。

コミュニケーションというのは器なんです。器が出来れば、中身は自然に満たされてゆく。コーチングにせよ、カウンセリングにせよ、プレゼンテーションでも、メンタルヘルスでも、リーダーシップでも。どれも要は“コミュニケーション”です。
よく仲間と話すのは、「丼飯のようなものだよね」って。どんな丼もご飯の部分は同じで、そこがコミュニケーションに該当する。その上に何を乗せるかで、カウンセリング丼にもなればリーダーシップ丼にもなる。僕が扱っているのは、そのベースにあたる部分のセンスです。(p.75)


 いやー、年末にして、とてもいい本に出会ったなあ、と思います。