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『校長という仕事』を読んで

 代田昭久『校長という仕事』を読了。おもしろかった。代田さんは、リクルート→和田中の校長先生。藤原和博先生の後を継いだ人です。今は佐賀県武雄市の教育監ですね。なんだかモチベーションが上がりました。

校長という仕事 (講談社現代新書)

校長という仕事 (講談社現代新書)

 校長先生って、どんな仕事してるんだろう?というのもありますが、それよりも和田中→武雄市でのさまざまな試みの基礎になっている考え方が読めておもしろい。

「社会関心力」と「学力」には関係がある
ここで言う「社会関心力」とは、「社会で起こっている出来事に興味や関心があり、自分なりの意見が持てること」をいいます。かみくだいて言えば、ニュースを見たり読んだりして、自分の意見を持つ力のことです。
和田中では、「よのなか科」の授業で書いた、200字程度の自由記述論文を約1ヵ月ごとに分析し、生徒には、いったいどんな力がついているのかを、「テキストアナリシス」という方法で調査していました。
さて、この調査の結果、「社会関心力」がある生徒は、学力と相関性があることが分かってきました。つまり、「社会の出来事に関心のある生徒は、学力の高い傾向がある」のです。(p.228)

 これって、実感として「社会関心力」と「学力」って、関係ありそう!と思っていたので、それをどう調査しているのかとか、より詳細に知りたいと思った。

 それと、PISA調査の話。「問題解決力」がどうして重視されているのか、という話。

2015年の国際学力調査(PISA調査)では、この「コラボレーション力」と同様の、「コラボレーティブ・プロブレム・ソルビング・スキルズ=Collaborative Problem Solving Skills」、つまり他人と協調しながら問題を解決する「協働的問題解決能力」が測定される見通しです。例えば、「A君は、こう主張している。B君は、それに対して、こう反論した。C君であるあなたは、この問題をどう解決しますか?」といった類の問題です。
なぜ、これほどまでに、コラボレーション力、協働的問題解決能力が、今、問われてきているのでしょうか?
20世紀後半の、世界的に経済成長が進んだ時代には、おおざっぱに言えば、正しいことを、速く、正確に、遂行していく能力が求められました。たくさんの知識を詰め込む教育も、その当時は効果的でした。ところが、時代が成熟社会へと変わり、グローバル化が進むにつれて、ある人にとっての正解が、ある人にとって正解でない社会になってきました。人それぞれの多様な価値観や意見をうまく共存させていくことが求められるようになりました。(p.232)


 それから、学校の役割として、学習の動機づけについての話も。これもとてもおもしろい。こうしてまとめられていると、いろいろなこと考える基盤になりそうだな、と思いました。

どうしたら、「やる気のスイッチ」を入れられるか?(p.242)

  1. 「競争動機」
    • あいつに負けたくない、偏差値の高い学校に行きたい、など、競争して勝つことの喜びを動機に。
  2. 「理解動機」
    • 分からない問題が解けるようになった、自分でうまく説明できた、など、わからないことがわかるようになったときの喜びを動機に。
  3. 「感染動機」
    • 理屈抜きでスゴイ。あんな人になりたい。憧れの人との出会いによって、学習のモチベーションが向上。

 そのうえで、「感染動機」がいちばん重要だと思っています、というふうに続いていきます。わかる!感染動機は、その後の動力になるものね。

私は、この3つの中でも、特に感染動機が大事だと思っています。
というのも、学校には、生徒が感染する機会が、多くないからです。教員は、教えることのプロフェッショナルであっても、残念ながら、社会経験の幅は広くありません。「これからは、グローバルな世界で生きて行かなくてはならない」と伝えたいのであれば、教員よりも、海外をまたにかけて仕事をしている商社マン、外交官を呼んできて熱く語ってもらったほうが、よっぽど感染力があるのです。
また、「競争動機」や、「理解動機」にくらべ、「感染動機」は、持続性があります。「競争動機」であれば、その喜びは勝った瞬間であり、「理解動機」であれば、分かった瞬間です。ところが、「感染動機」は、心の中で「あの人のようになりたい……」と思い続けることで、長い間、動機づけすることができるのです。(p.242-243)

 すごくおもしろかった。僕にとっての「感染動機」にもなったな、と思います。校長先生にならなくたってできる仕事はたくさんあります。参考になるところもたくさんあります。
 がんばろ。