イカの哲学発、平和教育行き
中沢新一・波多野一郎『イカの哲学』を読了。今まで、たくさんの本を読んできましたが、この本がいちばん刺激的だ。そして、自分が目指していること、自分が考えている問題意識にいちばん近い。感動した、本当に。中沢新一は宗教学者ですね。波多野一郎さんは、在野の研究者でグンゼの創業者一族だそうです。「イカの哲学」は、この波多野さんが書いた物。イカの水揚げ業で働いているときに、こうしていきなり網でつり上げられて次々と殺され、冷凍され、出荷されていくイカたちの死と、戦争での人間の死との関連について考え始める。彼らは「イカ」だから殺される。人はイカを殺すことに罪悪感を抱かない。というところからスタートして、実存や平和論に話が展開していく。
実は、同じテーマで大学の最後のタームペーパーを僕は書いた。どうして日常穏やかな人が戦争に行って、人を殺せるのか。そこには、「人を殺すのではなく、自分たちとは違うモノを殺すのだ」というexcuse(言い訳)を作って殺す、という図式がある、というようなことを調べてまとめた。例えば、「鬼畜米英」とか、聖戦での「あいつらは神の敵で、悪魔だ」とか、全部同じ。
だったら、こういう「あいつらは人ではない」というスローガンを「そんなことはない」と蹴り飛ばせるような人を育てればいい、と思って、戦争をなくすために僕は教育業界から努力をしようと思って、この道に入ったのです。
下は、中沢新一さんの解説。
『イカの哲学』に展開されているのは、普通の意味での平和論ではなく、超戦争に向かい合うことのできる超平和の思想である。国連や国際法は、戦争が超戦争に転化するのを防ぐことはできるかもしれない。しかし、人類の「心」には、いつなんどき超戦争に踏み込んでもおかしくない可能性がセットされている。その可能性を萌芽の段階で消滅させていくための原理は、超戦争を生み出す同じ人類の「心」の中に、見出されなくてはならない。(p.152)
ユネスコ憲章か!と思って、調べてみた。ユネスコ憲章前文は以下。
戦争は人の心の中で生まれるものであるから、
人の心の中に平和の砦を築かなければならない
似ていますねー。でも、本当、これ以外にはないでしょうよ、手段は。いや、いい本だった。ビリビリ震えたよ。おすすめ。僕はこれから、この本をきっと何かの授業の参考文献に使うでしょう。
- 作者: 中沢新一,波多野一郎
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2008/02/15
- メディア: 新書
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