日々、想う。んで、記す。

プライドを持たない、節操を持たない、愛着を持たない、弱音を吐かない。

エチ先生と『銀の匙』の子どもたち

伊藤氏貴『奇跡の教室 エチ先生と『銀の匙』の子どもたち』を読了。伝説の灘校国語教師・橋本武の流儀。いや、本当におもしろかった。中高一貫の灘校で、中学校3年間で『銀の匙』という薄い文庫本1冊を教材として、そこから脱線し、寄り道し、主体的に読んでもらいながら知的好奇心のスイッチを押していく授業を実践されていた先生の記録です。恥ずかしながら、橋本先生のことは知らなかったのですが、本当に刺激的でした。
1つの作品から、自由に発散していく学びの方法は、とってもWeb的だな、と思う。でも、自動の反応がわからないからこそ、授業準備はものすごく大変なはず。本当に頭が下がります。齋藤孝さんが言っている、一点豪華主義にも通じる、すべてが『銀の匙』から始まる授業。とっても参考になりました。授業づくりとかでやってみたいこともたくさんあります。[→メモ:奇跡の教室 エチ先生と『銀の匙』の子どもたち]
もうひとつ、とても興味深かったのは、橋本先生の幼少期のところ(p.53)。

教科書は閉じたままの、横道にそれる授業。なりきって、夢中になって、追体験する楽しさ----。
講談本の授業に魅せられた9歳の少年は、初めて母親に物をねだった。
「本を、買ってほしい」
母は二つ返事で応えた。
東海道中膝栗毛』『椿説弓張月』『南総里見八犬伝』…。分厚い原本を、むさぼるように次々と読破していく。
息子の読書熱に協力したのは、読書好きの母だけではなかった。
「父親が自分のために本棚をつくってくれたんですよ。嬉しかったですねえ…。その棚に本が一冊一冊たまっていくのが、また嬉しい」

本棚を作ってくれたお父さんが素敵。素敵なご両親のもとで育ち、それがまた教え子たちに循環していく。教育は全方位から、誰でもが関係するものだなあ、と思った。

奇跡の教室 エチ先生と『銀の匙』の子どもたち

奇跡の教室 エチ先生と『銀の匙』の子どもたち