日々、想う。んで、記す。

プライドを持たない、節操を持たない、愛着を持たない、弱音を吐かない。

人生初の山本周五郎で、名言の嵐に出会った

 山本周五郎『泣き言はいわない』を読了。人生で初の山本周五郎です。何から読もうかと思って文庫の棚を見て、ちょっと凹んでいるタイミングだったので、『泣き言はいわない』にしました。いや、名言の嵐だ。やばいこれは…。テンション上がるな。そして、作品も読んでみたくなった。なるよ、これは!

泣き言はいわない (新潮文庫)

泣き言はいわない (新潮文庫)

 例えば…

【p.47】「人の生活は頭で考えるようにゆくものではない、しかし、考えなしにやればなにごとでもできはしない、考えたことの万分の一でも、実際に生かしてゆくのが本当の生活だと思う」(「天地静大」杉浦透)

とか、

【p.63】人間はどこまでも人間であり、弱さや欠点をもたない者はない。ただ自分に与えられた職に責任を感じ、その職能をはたすために努力するかしないか、というところに差ができてくるだけだ。(ながい坂)

とか。失敗したり、うまくいかなかったりするのは普通だ、けども、そこで立ち止まるのはダメだ、という、微妙な突き放し感とドライな感じが好き。

 そのほかにも、こんな背中をドカーンと押してくれる言葉も。

【p.91】「男が自分の仕事にいのちを賭けるということは、他人の仕事を否定することではなく、どんな障害にあっても屈せず、また、そのときの流行に支配されることなく、自分の信じた道を守りとおしてゆくことなんだ」(虚空遍歴)

 他にも、ああ、高校の部活の頃、コーチに来てくれていた先輩に似たようなことを言われたなあ、と懐かしく思い出したのは、

【p.115】「勝負には勝つという確信が大切だ、互角の腕なら勝つという確信をもつ者に分がある、慢心はいけないが、自分を信ずる気力を失うことはみずから負けることだ」(「花も刀も」平手幹太郎)

そうだ、「勝つ」という確信が大切なんだ。そこを見失わずに前を向いてやっていくしかないのだよ。ということで、仕事をがんばるぞ、という決意とともに、あと4つ。

【p.117】「男が一生を賭けた仕事に、あせってやってできるものがあるか、おれはこれまでに幾たびも失敗した、これからも失敗するだろうと思う、しかしね、失敗することは本物に近づくもっともよい階段なんだよ、みていてくれ、おれはこんどこそ本物をつかんでみせるからね」(「虚空遍歴」中藤冲也)

【p.149-150】人間の生活には波があって、好況があれば必ず不況がある。好況のときにはスポーツ・カーなどを買って乗り廻したり、キャバレーで金をばらまいたりする。そして不況、倒産となると、すぐに一家心中とか自殺にはしってしまう。もちろん、そこに到る経過は単純ではなく、多くの複雑な因果関係が絡みあっていることだろうが、自分が苦しいときは他人も苦しいということ。その苦境は永久的なものではなく、いつか好転するということをなぜ考えられないのだろう。三食を一食にしても切抜けてやろう、というねばり強さがなければ、人間生活とはいえないのではないか。(金銭について)

【p.153-154】「学問はただ詰め込むだけが能ではない、学問だけがどんなに進んでも、おまえ自身がそれについてゆけなければ、まなんだことはなんの役にも立たない、ひとが二年かかるところを四年かけてやっても、それが身についたものならはるかに強いし力があるものだ」(ながい坂)

【p.154】「いいか、――自分の勘にたよってはならない、理論や他人の説にたよってもならない、自分の経験にもたよるな、大切なのは現実に観ることだ、自分の眼で、感覚で、そこにあるものを観、そこにあるものをつかむことだ」(正雪記)

 まだまだがんばろう。しかしこうして見てきたら、「虚空遍歴」が名言の嵐な予感。読んでみようかな、と思います。他にもいろいろ名言あったので、それはメモに。【→メモ:泣き言はいわない

虚空遍歴 (上巻) (新潮文庫)

虚空遍歴 (上巻) (新潮文庫)


虚空遍歴 (下巻) (新潮文庫)

虚空遍歴 (下巻) (新潮文庫)